仕事で使っている動画用のカメラは、Blackmagic Designの「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(以下、BMPCC4K)」です。商品名からも分かるようにシネマ用の4K対応カメラです。Blackmagicには、他にも6K、6K Pro、6K G2というモデルがありますが、私が使用しているのは、最下位モデルのBMPCC4Kで、レンズマウントはマイクロフォーサーズ(以下、MFT)です。Sony やCanonのフルサイズ用レンズなどと比べると、低コストでレンズの種類が多く、選択の幅が広がるというメリットがあるので、シネマカメラの入門機として、BMPCC4Kを使ってみてはいかがでしょうか?
BMPCC4Kに至るまで
仕事はWeb制作をメインでやっていますが、Webサイトを作るにあたって、メインビジュアルに動画を使用したり、プロモーション用の動画を請け負うことが増えてきました。そういった案件の場合、いつも協業しているプロカメラマンに頼むことがほとんどですが、カメラマン1人だけで撮影していると、撮影回数も増えてしまって時間もかかりすぎるため、同時に2台で回せたら良いなということで、私もカメラを準備してサポート的に撮影できるようにしたという流れです。
私自身は、元々Sonyのミラーレスを使ってましたが、動画編集の際に別々のカメラのデータを使うのは、ちょっとキツイなと思いBMPCC4Kにしました。諸々揃えるのにかなりの出費でしたが、動画案件が増えているので購入に至りました。
BMPCCの特徴
メリット
BMPCCを使っていて感じる点は、動画の画質がとにかくキレイ。自然なカラーでフィルムのようなイメージになります。これがBMPCCの最大の利点だと思います。動画データ形式は、Blackmagic RAW(BRAW)フォーマットになり、「DaVinci Resolve Studio」という編集ソフトが付属しているので、データ損失のないワークフローを実現できます。撮影時におけるカメラでの調整や設定は、メタデータとしてDaVinci Resolveに引き継がれ、動画編集時にすべて編集できます。撮影時に設定を間違っていても、あとからISO感度やホワイトバランスなどを簡単に調整できます。また、DaVinci Resolveは動画編集ソフトの中では、比較的動きが軽いかなと思います。
使っていて一番驚いたことは、色味の調整(カラーコレクションやカラーグレーディング)をする際に、自分のイメージどおりに調整できるという点です。もちろん、普通のコーデックでも色味の編集は可能ですが、BMPCC×DaVinci Resolveだと、段違いに編集しやすくなります。「しやすい」と言うのは語弊があるかもしれませんが、思いどおりの色味に編集可能になります。
ISO感度に関して、デュアルネイティブISOを採用していて、基準感度400のISO100-1000、基準感度3200のISO1250–6400という2つに分かれます。例えば、ISO400で撮影した場合は、ISO100-1000の間で編集可能となり、ISO1250以上に編集することはできません。また、ISO1600で撮影した場合は、ISO1250–6400の間で編集可能で、ISO1000以下に編集することはできません。
そのほかにもメリットがいくつかあります。
- 複雑なカメラ設定がなく、シンプルでわかりやすい
- 暑さに強い(デジタル一眼にありがちな連続撮影での熱停止はほとんどない)
- カメラリグを組むことできるので拡張性がある(外付けモニター・SSD・バッテリー・マイクなど)
- ミニXLR対応で、オーディオミキサーを通さず直接収録可能(3.5mmミニプラグに比べてノイズが少なく高品質)
デメリット
BMPCCは魅力的な部分が沢山ありますが、不便な部分もいくつかありるので、正直に書いていきたいと思います。
BMPCCは、基本的にマニュアルフォーカスでの撮影になります。普通はデメリットではありますが、使ってみるとオートフォーカス無しでも案外いけるという事が分かりました。下手にオートフォーカスが働くと、意図しないブレというかピント合わせが入って、邪魔になってしまうことがあるので、そういった心配がなくなります。とは言え、BMPCCのマニュアルフォーカスは、カメラマンの腕が試されるので、まずは被写体の動きが少ないシーンから練習すると良いと思います。
また、手振れについて、Sonyのような本体のアクティブ手振れ補正は無いので、手持ち撮影はかなり慎重になります。ただ、DaVinci Resolveのスタビライザー機能がかなり秀逸なので、ちょっとした手振れは気にしなくても大丈夫です。さすがに歩きながら撮影する際は、ジンバルを使った方が良いです。もしくは、そこだけ手振れ補正の入っているカメラや、GoProなどのアクションカメラを使って補助する形もアリだと思います。その際には、色味を寄せやすくするために、log撮影にしておくと良いです。
バッテリーの持ちが悪いという事もあらかじめ知っておいた方が良いです。BMPCC4Kの場合、バッテリーはLP-E6で(気温にもよりますが)実際30分ももたないです。そのため、長時間撮影の際には、外部バッテリーを使うか電源を使用しないと厳しいです。
BMPCCの各モデルについて
6Kモデルが4機種ありますが、現行モデルは6K Pro、G2、2023年新モデルの3機種となります。
モデル | センサーサイズ | 解像度 | マウント | 発売日 (公式リリース) | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
BMPCC 4K | 18.96mm x 10mm フォーサーズ | 4096×2160 | MFT | 2018年4月9日 | 209,800円 |
BMPCC 6K(旧) | 23.10mm x 12.99mm スーパー35 | 6144×3456 | EF | 2019年8月8日 | 312,180円 |
BMPCC 6K Pro | 23.10mm x 12.99mm スーパー35 | 6144×3456 | EF | 2021年2月17日 | 409,800円 |
BMPCC 6K G2 | 23.10mm x 12.99mm スーパー35 | 6144×3456 | EF | 2022年6月23日 | 322,800円 |
BMPCC 6K(新) | 36mm x 24mm フルフレーム | 6048×4032 | L | 2023年9月15日 | 419,800円 |
また、価格は公式サイトを参考にしているため、Amazon等とは異なります。
おすすめモデル
BMPCC 6K Proは、1,500nitのHDRタッチスクリーン、内蔵NDフィルター、大容量バッテリー(NP-F570式)、ビューファインダー対応なので、4Kを使っていて不便に感じる部分が補われています。ただ、レンズやリグなど揃えていくと結構高額になってしまうので、なかなか手が出ないのではないでしょうか?それに比べてBMPCC 4Kは、5年以上前のモデルですが、コスパを考えるとまだまだ現役で使えるカメラだと思います。参考までに、メルカリでそこそこ装備を整えてセット物で15万円前後で取引されています。中古は大抵の場合、レンズ無し、DaVinci Resolve Studioのシリアル番号無しなので、そちらは購入する必要があります。
BMPCCで撮影する際は、基本的にマニュアルフォーカスになりますし、カメラマンの撮影技術・知識・感性が非常に重要なカメラなので、中古でも良いのでBMPCC 4Kから始めてみるのが得策だと思います。BMPCC 4Kで腕を磨いて、面白いなと感じたらBMPCC 6K Proを検討することをオススメします。BMPCC 6K G2は、6K ProからNDフィルターを除いたモデルとなっているので、予算と相談してどちらにするか決めると良いと思います。
ちなみに、BMPCC 4KでもEFレンズ用のマウントアダプターを使えば、CANONやSIGMAなどのEFレンズも使用できるようになります。BMPCC 6Kに買い替え後は、BMPCC 4Kをサブ機として使っても良いので、どちらのレンズを買っても無駄にはならないと思います。私は今のところ、汎用レンズをMFT、ミドルクラス以上のレンズをEFというように使い分けています。スチルの一眼レフカメラでCANONを使っているので、そちらのEFレンズも動画用に使いまわしたりしています。
※後述のSIGMAのレンズなど、F値の変更をするための絞りリングのないレンズの場合は、電子接点付きのマウントアダプターでないとF値の変更が出来なくなってしまいます。
↑レデューサーレンズ搭載型で0.71倍の画角になり、F値が1段分明るくなります。
↑レンズはついていないため等倍です。
おすすめレンズ
レンズについては、好みもあるので一概には言えませんが、私が使っているレンズはあまりクセが強くないものを使っています。というのも、DaVinci Resolveでカラーコレクション・カラーグレーディングするためです。もちろん、独特の風合いがでるようなレンズもありますので、予算に合わせて揃えると良いと思います。
以下の6本のレンズの中で、LAOWAの2本(7.5mm、17mm)は汎用的に使えるレンズだと思います。そのほかのレンズも含めて、F値が2.0以下のものをオススメします。というのも、マイクロフォーサーズのレンズはフルサイズ等に比べて、ボケ感が出にくくなるので、レンズのスペックでカバーする必要があります。
レンズの最小構成は、LAOWAの2本(7.5mm、17mm)と24mmか25mmのレンズを1本あれば、まずは足りるかなと思います。出来れば単焦点で揃えたいところですが、LAOWA 7.5mmとSIGMA Art 18-35mm F1.8 DC HSMの2本でも良いかなと思います。
撮りたいものにもよりますが、35mm以上のレンズは使う頻度が少ないと思うので、後から揃えても大丈夫だと思います。既存一眼レフを持っている場合は、そちらのレンズから代用しても良いかなと思います。
最低限用意したほうがいい
BMPCC4Kカメラ本体とレンズだけだと、仕事での撮影には対応できない事があるので、最小構成として用意したほうが良いものを紹介します。
外付けSSDですが、私が購入した時に比べて、かなり価格高騰しています。。。次に紹介する汎用SSDマウントを使えば、違うSSDでも使えるようになるので、他のSSDを選択したほうが良さそうです。
今回紹介した商品は、最小構成なので、スタートアップの方に向けたものになります。次回は、ケージやトップハンドルなどのリグだったり、外部モニター・外部バッテリーなど、よりパワーアップするための周辺機器について解説したいと思います。
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